センベルゴ🄬投与開始時のモニタリング
センベルゴ®の投与開始前に、
- 猫が、食欲があり飲水しており、水和状態が正常であること
- 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の症状が見られないこと(もしくはケトン体が検出されないこと)
- 膵炎や悪液質、慢性の下痢症状がみられていないこと
を確認してください。
センベルゴ🄬の用法・用量
センベルゴ®は1日1回ほぼ同じ時刻に、体重1kgあたり1mgを、猫の口腔内に直接投与、または1回で食べきれる少量のフードにかけて投与します。シリンジには体重ごとの目盛がついています。
投与開始から2週間までの注意事項
十分な内因性インスリン分泌がない猫を判別するため、ケトーシス/DKA/ eDKA※をモニタリングします。
- 飼い主に、自宅で1~3日ごとに尿中ケトン体をチェックしてもらう
- 投与開始から1週間後および2週間後に来院してもらい、健康状態とケトン体の有無(病歴の確認、診察、尿または血中ケトン体の測定)について確認する
※eDKA:血糖値が正常なDKA
ケトン体が検出された場合の対処
ケトン体が検出された場合または体調不良になった場合は、センベルゴ®の投与を一時中止してください。さらに検査を行い、ケトーシス/DKA/eDKAおよび併発する症状に応じて対処してください。これらの症状が解消し、一般状態が良くなった場合はセンベルゴ®の投与を再度検討することができます。
治療開始から4週間後
動物病院で以下の検査を行ってください。
- 臨床症状(例:飲水、食欲、運動、水和状態、体重)
- 血糖コントロール(フルクトサミン値)
- 尿検査(ケトン体と尿路感染症)
長期モニタリング
3ヶ月ごとに動物病院で、臨床症状、血糖コントロールを確認し、尿検査(ケトン体と尿路感染症を確認するため)を実施してください。
飼い主には、猫の体調を毎日観察し、気になる場合は尿中ケトン体をチェックするよう、伝えてください。
糖尿病管理のフローチャート
A) インスリン治療歴のある猫はDKAのリスクが高い可能性があるので、治療開始時には特に注意深く観察してください。
B) ケトアシドーシスを解消するためには、インスリン投与と静脈内輸液が必要です(血糖値が270mg/dL未満の場合はブドウ糖/デキストランを補充する)。
C) 内因性インスリンの欠乏によって、センベルゴ®による治療に適さない猫が存在します。こうした猫では、インスリンによる長期治療が必要になります。
血糖値の正常なDKA(eDKA)とは
糖尿病の猫は、治療前も治療中にもケトーシスやケトアシドーシスになりやすい傾向があります。特にSGLT2阻害薬を投与中の猫ではケトン体のモニタリングは重要です。また、eDKAを発症することもあるので、eDKAの病態を理解し、対処法を知ることが必要です。eDKAはDKAの一種で、インスリン欠乏にもかかわらず、SGLT2阻害薬により血糖値が正常範囲にあるDKAです。
eDKAの猫は典型的なDKAの徴候を示しますが、血糖値は252mg/dL未満です。
標準的なDKAと同様の治療(速効型インスリンの投与を含む)が必要です。
ケトーシス
ケトーシスは血液中にケトン体が存在するが、アシドーシスを起こすほどではない状態です。ケトーシスの猫のほとんどは健康で食餌もとっており、病気のようには見えません。しかしケトアシドーシスに陥る前になるべく早く糖尿病の治療を開始する必要があります。
糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)
DKAは、ケトン体が血液検査でみつかる、高血糖、代謝性アシドーシス、脱水、無気力、食欲不振、嘔吐、体重減少を特徴とした重篤な代謝不全です。DKAは、未治療の糖尿病や、治療中であっても併発疾患がある糖尿病症例で発症することがあります。速効型インスリン、静脈内輸液、ブドウ糖補給による迅速な治療が必要です。
センベルゴ🄬の投与方法とケトアシドーシスについて知っていただきたいこと
センベルゴ®は、インスリンとは異なり、尿からの糖の排泄を増やすという機序で糖尿病を治療します。センベルゴ®によって臨床症状と糖毒性が緩和されるだけでなく、内因性インスリンの産生が回復し、末梢のインスリン感受性も向上することが期待されます。
しかし、すべての糖尿病猫が十分な内因性インスリンを分泌できるわけではありません(特に治療初期)。ごく一部の糖尿病猫では、内因性インスリンの分泌が不十分なため、センベルゴ®による治療中にケトアシドーシスを発症するリスクが生じます。 DKAを発症した場合、通常は血糖値が正常なeDKAとなります。
このため、糖毒性がコントロールされ内因性インスリン分泌とインスリン感受性が上昇する前の治療開始から数週間の間、ケトン体をモニターすることが重要です。定期的にモニターすることで、猫が体調不良になる前に、ケトーシスの段階で発見することができます。
ケトアシドーシスのリスクがある猫の見分け方や、センベルゴ®投与開始後のケトン体のモニタリング方法については、上記をご参照ください。